Unity離れの第3の選択肢 — COCOS 4がMITオープンソースになった意味

ゲーム制作技術
この記事の結論
Unity料金騒動以降、ゲームエンジンの選択肢は大きく揺れました。Godotが注目される中、もう一つの有力候補として浮上しているのがCOCOS 4です。MITライセンスで完全オープンソース化されたことで、エンジンを自由に改造・フォークできるだけでなく、AI時代の開発環境としても新しい可能性を持っています。

Unity離れの中で浮上する「第3の選択肢」

2024年、Unityが発表したランタイム料金(Runtime Fee)は、ゲーム開発者コミュニティに大きな衝撃を与えました。

「突然の料金変更リスク」が現実になったことで、多くの開発者がUnity依存の危険性を再認識。エンジン選択の見直しが一気に進みました。

  • Unity → 依然として巨大なエコシステムだが、信頼に傷
  • Godot → 完全オープンソースとして急成長
  • Unreal → AAA開発向けだが、個人にはオーバースペック

しかし最近、ここに新しい候補が加わりました。COCOS 4です。

COCOSは中国モバイル市場では圧倒的なシェアを持つエンジンですが、2025〜2026年にかけてMITライセンスで完全オープンソース化されたことで、グローバルなゲーム開発者の間でも存在感が増しています。

COCOS 4とは何か

COCOS 4は、Cocos Creator 3.x系統をベースにした次世代ゲームエンジンです。最新バージョンは3.8.8で、GitHubで9,500以上のスターを獲得しています。

Cocos Creatorのエディタ画面。3Dビストロシーンのリアルタイムレンダリング、ヒエラルキー、アセットブラウザ、インスペクターが表示されている

Cocos Creatorのエディタ画面。3Dシーンエディタ、ヒエラルキー、アセットブラウザ、インスペクターが統合されたUIはUnityユーザーにも馴染みやすい(出典: Cocos GitHub)

特徴的なのはハイブリッド構造です。

  • C++(エンジンコア・レンダリング — 全体の約51%)
  • TypeScript(ゲームスクリプト — 全体の約35%)

C++でパフォーマンスを確保しつつ、TypeScriptで開発効率を上げるアプローチです。Web開発者にとっては、C#(Unity)やGDScript(Godot)より馴染みがあるかもしれません。

エンジン機能

「COCOSは2D向けの軽量エンジン」というイメージがありますが、COCOS 4ではフル3D対応のゲームエンジンに進化しています。

COCOS 4の機能一覧。3Dシーンエディタ、アニメーション、スケルタルアニメーション、地形、glTF、TypeScript&NPM、アセットマネージャ、Vulkan&Metal、PBR、物理、パーティクル、UI、クロスプラットフォーム対応

COCOS 4の機能一覧。3Dシーンエディタからパーティクル、物理エンジン、PBRまで、フルスタックのゲームエンジン機能を備える(出典: Cocos GitHub)

  • 2D / 3Dレンダリング(PBR対応)
  • 物理エンジン
  • パーティクルシステム
  • スケルタルアニメーション
  • UIシステム
  • 地形エディタ
  • glTFインポート

グラフィックスAPIはVulkan(Windows/Android)、Metal(Mac/iOS)、WebGL(Web)に対応。カスタマイズ可能なレンダリングパイプラインで、フォワード/ディファードレンダリングの両方をサポートします。

対応プラットフォーム

  • Windows / Mac
  • iOS / Android
  • HarmonyOS(Huawei)
  • Web(ブラウザ)
  • WeChat / TikTok ミニゲーム

特にWebとミニゲームへのネイティブ対応は、UnityやUnrealにない強みです。

市場シェアと実績

COCOSは特にモバイルゲームで強く、中国市場では圧倒的なシェアを持っています。

  • 中国モバイルゲーム市場:約40%
  • 世界市場:約20%

COCOSで開発された有名タイトル:

  • Pokemon Masters
  • Fire Emblem Heroes
  • Cookie Run

大規模商用タイトルの実績があるエンジンです。「知名度が低い=実力がない」ではありません。

MITオープンソースの意味(最重要ポイント)

COCOS 4で最も重要なのは、MITライセンスで完全オープンソース化されたことです。これは単なる無料化ではありません。

エンジンを自由に改造できる

MITライセンスでは、エンジンのソースコードを自由に変更できます。

  • レンダリングパイプラインの改造 — 独自のシェーダーやポストプロセスを追加
  • 独自機能の追加 — ゲームに特化した機能をエンジンレベルで実装
  • パフォーマンス最適化 — ターゲットプラットフォームに合わせたチューニング

Unityでは「エンジン内部を触りたいならEnterprise契約が必要」です。COCOSなら誰でもエンジンの中身を読んで、変えて、使えます。

フォークして自分専用エンジンを作れる

MITライセンスなので、エンジンをフォークして自分のスタジオ専用のエンジンを作ることも可能です。

たとえば:

  • 2Dピクセルアートに特化したフォーク
  • VR/AR機能を追加したフォーク
  • 特定ジャンル(ローグライク、タワーディフェンスなど)に最適化したフォーク

GodotがMITライセンスで多くのフォークを生んだように、COCOS 4でも同じことが可能です。

ロイヤリティゼロ

MITライセンスでは商用利用に一切の制限がありません。

  • 売上がいくらでもロイヤリティなし
  • 収益条件なし
  • 企業規模制限なし

Unityのような「ある日突然料金体系が変わるリスク」が構造的に存在しないのです。ライセンスはコードと一緒に公開されており、後から変えることはできません。

AI時代との相性

オープンソース化にはもう一つ大きなメリットがあります。LLM(大規模言語モデル)がエンジンコードを直接読めることです。

クローズドソースのUnityでは、AIはドキュメントとAPIリファレンスからしか学習できません。しかしオープンソースのCOCOS 4なら:

  • エンジンの内部実装を直接解析
  • バグの原因をコードレベルで特定
  • 最適化の提案をエンジン仕様に基づいて実行
  • エンジン拡張コードの自動生成

COCOS側もこの方向を強く意識しています。新IDE「PinK」はAIエージェント前提の設計になっており、MCP(Model Context Protocol)を通じてAIが開発環境と直接やり取りできる仕組みを採用しています。

新IDE「PinK」— AIファーストの開発環境

COCOS 4と並んで注目すべきは、新しいIDE「PinK」です。

PinKの設計思想は「AIエージェントが開発パートナーとして動くIDE」です。

  • AIエージェント内蔵 — コード補完だけでなく、タスク実行レベルのAI支援
  • MCP対応 — Claude CodeのようなAIツールがエディタの機能に直接アクセス可能
  • プラグイン拡張 — 新機能をAIエージェントとして追加できる設計

「AIにコードを書かせる」のではなく、「AIとゲームを一緒に作る」環境を目指している点が、他のエンジンとの大きな差別化ポイントです。

他エンジンとの比較

エンジン ライセンス 言語 強み 弱み
Unity プロプライエタリ C# 巨大エコシステム、Asset Store 料金リスク、ソース非公開
Godot MIT GDScript / C# 完全OSS、コミュニティ急成長 3D機能がまだ発展途上
Unreal ソース公開(制限付き) C++ / Blueprint AAA品質のグラフィックス $100万超で5%ロイヤリティ
COCOS 4 MIT TypeScript / C++ Web/モバイル特化、改造自由 英語圏の情報・アセットが少ない

COCOS 4が向いている人・向いていない人

向いている人

  • モバイルゲーム・Webゲームを作りたい
  • TypeScriptが書ける(Web開発経験者)
  • 中国市場・ミニゲーム市場を狙いたい
  • エンジンを自由に改造・フォークしたい
  • ロイヤリティや料金リスクをゼロにしたい
  • AIとの連携を重視したい

向いていない人

  • AAA品質の3Dグラフィックスが必要
  • コンソール向け大型タイトルを開発
  • Unityの豊富なアセットストアに依存している
  • 英語の学習リソースやコミュニティを重視する

まとめ — 「選択肢がある」ことの価値

Unity料金騒動が教えてくれたのは、特定のプロプライエタリツールに依存するリスクです。

Godotが「第2の選択肢」として急成長しましたが、COCOS 4の登場で第3の選択肢が生まれました。

特にMITオープンソース化は、3つの点で大きな意味を持ちます。

  1. 料金変更リスクがゼロ — ライセンスは永続的に保証される
  2. エンジン改造が完全に自由 — フォークも商用利用も制限なし
  3. AI時代と相性が良い — LLMがソースコードを直接読んで活用できる

「UnityかGodotか」の二択ではなく、プロジェクトの特性に合わせて選べる時代になりつつあります。モバイル・Webゲームを作るなら、COCOS 4は真剣に検討する価値のあるエンジンです。

参考ソース

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