2Dイラストから3Dモデルを自動生成するAIは、2025年から急速に進化している。TRELLIS.2(Microsoft)は高品質な3Dアセット生成で話題になったが、入力できるのは画像1枚だけ。裏側はAIが想像で補完するため、意図しないデザインになることが多かった。
テンセントが開発したHunyuan3D-2mv-Turboは、この問題を正面から解決する。正面・横・背面など複数の角度の画像を入力でき、全方位の情報をもとに3Dメッシュを生成する。
実際にRTX 5090環境でローカル実行し、ゲーム用キャラクターの3D化を試してみた。
Hunyuan3D-2mv-Turbo とは
テンセントのHunyuan3Dチームが開発した、画像から高解像度テクスチャ付き3Dアセットを生成するモデル。2つのモードがある:
| モード | 入力 | 特徴 |
|---|---|---|
| Hunyuan3D-2-Turbo | 画像1枚 | TRELLIS.2と同じシングルビュー入力。手軽 |
| Hunyuan3D-2mv-Turbo | 画像1〜4枚(正面・背面・左・右) | マルチビュー入力。裏側も意図通りに生成 |
TRELLIS.2との決定的な違い
| TRELLIS.2 | Hunyuan3D-2mv-Turbo | |
|---|---|---|
| 入力画像 | 1枚のみ | 1〜4枚(マルチビュー) |
| 裏側の精度 | AIの想像(崩れやすい) | 入力画像に忠実 |
| 必要VRAM | 24GB | 6GB〜 |
| PBRテクスチャ | ○ | ○ |
| ComfyUI対応 | × | ○ |
| Blenderアドオン | × | ○ |
| ライセンス | オープンソース | オープンソース |
ゲームキャラの3D化で「裏側がぐちゃぐちゃ」は致命的だ。キャラクターは360度から見られるのだから、正面だけ合っていても意味がない。マルチビュー入力ができるかどうかは、実用性を左右する決定的な差だ。
実際に動かしてみた ― 検証環境
| 項目 | スペック |
|---|---|
| GPU | NVIDIA RTX 5090(32GB VRAM) |
| 生成モード | Standard / High |
| 生成時間 | 約80秒 |
| コスト | 完全無料(ローカル実行) |
テスト1:シングルビュー入力(Hunyuan3D-2-Turbo)
まずは1枚入力のシングルビューモードを試す。サンプルギャラリーに表示されているキャラクターを使用。
Hunyuan3D-2-TurboのUI。右側にサンプルギャラリーが並ぶ
1枚の画像からテクスチャ付き3Dメッシュが生成された。Standardモードで約80秒
テクスチャの質感、形状の再現度ともに高い。シングルビューでもこのクオリティが出る。
テスト2:マルチビュー入力(Hunyuan3D-2mv-Turbo)― 本命
次に、自作の魔女キャラクターのイラストを正面・横・背面の3枚で入力する。これがTRELLIS.2にはできないHunyuan3D-2mvの真骨頂だ。
入力画像:魔女キャラの正面(左)と背面(右)。これに横のイラストも加えて3枚入力
生成結果:テクスチャ表示
マルチビュー入力から生成された3Dモデル。テクスチャ表示。帽子・マント・ブーツの色と形が入力画像に忠実
生成結果:ジオメトリ表示
同じモデルのジオメトリ表示。メッシュの密度と形状の再現度が確認できる
帽子のとがり、マントの裾、ブーツの形状——正面・背面の両方の特徴が3Dモデルに反映されている。TRELLIS.2の1枚入力では、背面のマントの形状がAIの想像で崩れることが多かったが、マルチビュー入力ならその問題が起きない。
ゲーム開発に使えるか?率直な評価
使えるポイント
- プロトタイプには十分:80秒で3Dモデルのプロトタイプが出る。モデラーに発注する前の「方向性確認」に最適
- 背面の精度:マルチビュー入力のおかげで、360度から見て破綻しない。TRELLIS.2の最大の弱点を克服
- 完全無料・ローカル実行:クラウドAPIに課金する必要がない。データが外に出ない
- Blenderアドオン・ComfyUI対応:既存のワークフローに組み込みやすい
まだ足りないポイント
- リトポロジーは別途必要:出力メッシュはポリゴン数が多く、そのままゲームに入れるには重い。リトポは手動またはAIリトポ(Hunyuan3D 3.0で対応)が必要
- リギング非対応:ボーンは入っていない。リグは別ツール(Mixamoなど)で対応
- 細部のテクスチャ品質:遠目には良いが、ズームすると塗りが甘い部分がある。最終アセットには手描き修正が必要
Mayaで開いてみた ― メッシュの現実
生成された3DモデルをMayaにインポートして、メッシュの状態を確認してみた。
Mayaでワイヤーフレーム表示。26,385頂点 / 40,000面。全て三角ポリゴンでガビガビ
26,385頂点、40,000面、全て三角ポリゴン。正直、このままゲームに使えるメッシュではない。トポロジーは完全にガビガビで、エッジフローもない。アニメーションを付けるには手動リトポかAIリトポ(Hunyuan3D 3.0で対応)が必須だ。
ただし形状の再現度は高い。帽子の先端、マントの広がり、ブーツの厚みがしっかり出ている。「形は合ってるがトポロジーがダメ」——これが2026年のAI 3D生成の現在地だ。
3Dプリントには問題なし
Bambu Lab P2Sのスライサーにそのまま読み込み。1時間55分 / 9.02g / PLA素材
一方で3Dプリントには問題なく使える。メッシュが三角ポリゴンでもスライサーは気にしない。STLファイルとしてそのままBambu Labのスライサーに読み込み、0.08mm積層ピッチの高品質設定で約2時間。フィギュア原型のプロトタイプとしては十分すぎるクオリティだ。
つまり用途によって評価が分かれる:
- ゲーム用アセット:リトポ必須。このままでは使えない
- 3Dプリント:そのまま使える。フィギュア原型のプロトタイプに最適
- レンダリング用:静止画なら問題なし。ポリゴン数が多い分、シルエットは綺麗
筆者の本音:3Dモデラーの仕事は「作る」から「直す」に変わる
筆者(uc)が実際にHunyuan3D-2mv-Turboを動かして確信したのは、「3Dモデルを"ゼロから作る"時代は終わりつつある」ということだ。
80秒で3Dモデルが出る。しかもマルチビュー入力で裏側まで意図通り。2年前は「AIの3D生成?おもちゃでしょ」と思っていたが、今はプロトタイプとして十分に使える品質になっている。
もちろん、このまま最終アセットには使えない。リトポ、リグ、テクスチャの手直しは必要だ。だがそれは「ゼロから10時間かけてモデリングする」のと「80秒で出た叩き台を2時間で仕上げる」の差だ。後者の方が圧倒的に速い。
3Dモデラーの仕事は「作る」から「直す」に変わる。それが良いことか悪いことかは人によるが、技術の流れは止められない。使える人から使っていくだけだ。
まとめ
- Hunyuan3D-2mv-Turboは、正面・横・背面の複数画像を入力できる3D生成AI
- TRELLIS.2は画像1枚のみ → 裏側が崩れる問題をマルチビュー入力で解決
- RTX 5090環境で約80秒で生成完了。完全無料・ローカル実行
- 必要VRAM 6GB〜(TRELLIS.2の24GBと比べて圧倒的に軽い)
- ゲーム開発ではプロトタイプ用途に実用レベル。最終アセットにはリトポ・リグ・テクスチャ修正が必要
- ComfyUI・Blenderアドオン対応で既存ワークフローに組み込みやすい
参考ソース
- Hunyuan3D-2 ― GitHub(テンセント公式)
- Hunyuan3D ― 公式サイト
- TRELLIS.2 ― GitHub(Microsoft公式)
- Hunyuan 3D 3.0 in ComfyUI ― ComfyUI Blog
- Hunyuan 3D 3.0: The Future of AI-Powered Modeling ― Vset3D
- Hunyuan3Dをローカルで動作させてみた ― 窓の杜
- 3Dモデル生成AI技術がオープンソース化 ― ゲームメーカーズ



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