- 2028年から始まる暗号資産の20%分離課税は、国内取引所に上場している「特定暗号資産」だけが対象。ゲーム専用トークンやNFTは対象外のまま、引き続き雑所得(総合課税)で課税される可能性が高い。
- しかし、ライトプレイヤーにとっては雑所得の方がむしろ有利になるケースがある。総所得が330万円以下なら適用税率は10〜20%で、分離課税の20%以下になりうる。
- 一方で「取得時課税」「損益通算不可」「海外DEXでも申告義務あり」という3つの落とし穴は、知らないと痛い目に遭う。
「2028年から暗号資産が20%の分離課税になるらしい。やった、NFTゲームの利益も安くなる!」——そう思った人、ちょっと待ってほしい。実はゲームで稼いだNFTやトークンの多くは、この分離課税の対象外のままになる可能性が極めて高い。
でも、がっかりするのはまだ早い。この記事では「なぜ対象外なのか」を説明した上で、ライトプレイヤーにとっては雑所得のまま残る方が実はお得になるケースがあることを、具体的な税額シミュレーションとともに解説する。
Web3ゲームで稼いだら税金はかかるのか——まず「どの所得区分か」を確認する
結論から言えば、Web3ゲームで得た利益には原則として税金がかかる。ただし「どの所得区分になるか」で税額は大きく変わる。ここが最初の分かれ道だ。
ゲームプレイ報酬(トークン獲得)
STEPN GOやPROJECT XENOなどで、プレイして得たトークンは雑所得に分類される(国税庁FAQ No.1525-2)。雑所得は総合課税(他の所得と合算して累進税率が適用される仕組み)の対象だ。税率は所得額に応じて5%〜45%まで段階的に上がる。
NFT売却益
ここは少しややこしい。国税庁の見解では、NFTの売却益は取引の性質によって所得区分が変わる。
- 趣味・非継続的な売却 → 譲渡所得の可能性あり。譲渡所得には年間50万円の特別控除が使える。
- 継続的・営利目的の売買 → 雑所得または事業所得。特別控除はない。
つまり、たまに遊んでNFTを売る程度なら譲渡所得として50万円控除が使える可能性がある。一方、転売目的で頻繁にNFTを売買しているなら雑所得扱いだ。
最も重要なポイント:課税タイミングは「取得時」
見落としがちだが、ゲーム報酬トークンは「受け取った瞬間」の時価で課税される(国税庁「暗号資産の税務上の取扱い」)。「まだ売ってないから税金はかからない」は誤りだ。ただし、ゲームNFTのように時価の算定が困難な場合は0円扱いが認められるケースもある。この点は後述する「落とし穴」セクションで詳しく触れる。
「2028年から暗号資産は20%分離課税」——ゲームNFTは対象外のまま、その理由
2025年末に報じられた税制改正で、2028年度から暗号資産に申告分離課税20%が導入される方針が固まった。「ついに来た」と盛り上がった人も多いだろう。だが、ここに重大な但し書きがある。
「特定暗号資産」だけが対象
分離課税20%の対象となるのは「特定暗号資産」、つまり国内の暗号資産交換業者(取引所)に上場している銘柄のみだ(あたらしい経済「暗号資産は申告分離課税へ、但し特定銘柄に限る」)。ビットコインやイーサリアムは対象になるが、ゲーム専用トークンの多くはそうではない。
- GXE(PROJECT XENO):一部国内取引所に上場しているが、ゲーム内報酬トークン(UT)は別物
- GST(STEPN系):国内取引所未上場が多い
- ゲームNFT全般:金融商品取引法の対象外となる可能性が高く、そもそも分離課税の枠組みに乗らない
つまり、Web3ゲームプレイヤーの大半の収益は、2028年以降も雑所得(総合課税)のままになると考えておくべきだ。ここを勘違いしたまま確定申告すると、後から修正申告を求められるリスクがある。
実は逆転が起きる——累進課税だからライトプレイヤーに有利な理由
「分離課税の対象外」と聞くとマイナスに感じるかもしれない。しかし、ここで冷静に数字を見てほしい。
累進課税の税率テーブル(所得税)
| 課税所得 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 195万円以下 | 5% | 0円 |
| 195万円〜330万円 | 10% | 97,500円 |
| 330万円〜695万円 | 20% | 427,500円 |
| 695万円〜900万円 | 23% | 636,000円 |
| 900万円超〜 | 33%〜45% | (段階的に増加) |
ポイントはここだ。合算後の課税所得が330万円以下なら、適用される所得税率は最大でも10%。住民税10%を足しても合計20%で、分離課税の20%と同じかそれ以下になる。
さらに、専業プレイヤー(他に収入がない人)でゲーム利益が少額なら、基礎控除48万円を引いた後の課税所得に対して最低税率5%しかかからない。分離課税20%よりはるかに安い。
つまり、月1,000〜3万円程度を稼ぐライトプレイヤーにとっては、「分離課税の対象外=損をしている」わけではない。むしろ累進課税の低税率ゾーンに収まっている限り、分離課税より有利なのだ。
パターン別シミュレーション——専業・副業・低利益で税額は全然違う
では、具体的にどのくらいの税金がかかるのか。2026年時点の税制で、40歳未満・独身・経費ゼロという条件でシミュレーションしてみる。
パターンA:専業プレイヤー(他の収入なし)、年間NFT利益50万円
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 年間利益 | 50万円 |
| 基礎控除 | -48万円 |
| 課税所得 | 2万円 |
| 所得税(5%) | 約1,000円 |
| 住民税 | 約5,000円 |
| 税負担合計 | 約5,000〜6,000円 |
一見すると「ほとんどタダ」に見えるが、落とし穴がある。専業の場合、国民健康保険料(年間約7.4万円〜)と国民年金(年間約21万円)が別途かかる。実質の手取りは約21万円前後まで下がる。ゲームだけで食べていくのが厳しい理由のひとつだ。
パターンB:会社員(年収400万円)、副業NFT利益50万円
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| NFT利益による追加所得税 | 約2.5万円 |
| 追加住民税 | 約5万円 |
| 追加税負担合計 | 約7.5万円 |
| 実質手取り | 約42.5万円 |
会社員の場合は社保が給与天引きなので、NFT利益に対する負担は純粋に税金だけ。50万円稼いで手元に42.5万円残るなら、実効税率は15%。分離課税20%より安い。
パターンC:会社員(年収400万円)、副業NFT利益200万円
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| NFT利益による追加所得税 | 約21万円 |
| 追加住民税 | 約20万円 |
| 追加税負担合計 | 約41万円 |
| 実質手取り | 約159万円 |
利益200万円になると実効税率は約20.5%。このあたりから分離課税20%とほぼ同水準になる。「雑所得が不利になるのは、利益が大きくなった場合」ということがはっきり見える。
副業20万円ルールについて
よく聞く「副業20万円以下なら申告不要」というルール(国税庁「給与所得者で確定申告が必要な人」)。これは所得税の確定申告に限った話だ。給与所得者で副収入が年20万円以下なら、所得税の確定申告は不要。しかし、住民税の申告は別途、市区町村に対して必要になる。ここを忘れると後で追徴されるので注意してほしい。
知らないと危ない3つの落とし穴
落とし穴1:取得時課税——「売ってないから大丈夫」は嘘
前述の通り、ゲーム報酬としてトークンを受け取った時点で、その時価が課税対象になる。たとえば時価100円のトークンを1万枚もらえば、その時点で100万円の所得として計上される。その後トークンが暴落して10円になっても、過去の100万円分の課税は取り消されない。
これが「含み損なのに税金だけ払う」という最悪のパターンだ。P2E(Play to Earn)全盛期に多くのプレイヤーがこの罠にはまった。
ただし、ゲームNFTのように市場価格が明確でないものは、時価の算定が困難として0円計上が認められる場合もある。この判断は個別ケースに依存するので、金額が大きくなったら税理士に相談すべきだ。
落とし穴2:雑所得は損益通算・損失繰越ができない
株式投資なら、損失が出ても翌年以降に繰り越して相殺できる。しかし雑所得にはこの仕組みがない。
- ゲームAで50万円の利益、ゲームBで30万円の損失 → 同年内の雑所得どうしなら通算可能(差し引き20万円が課税対象)
- ゲームの損失を給与所得と相殺 → 不可
- 今年の損失を来年に繰り越し → 不可
複数のゲームをプレイしている場合、利益と損失を同じ年度内でうまく管理することが重要になる。
落とし穴3:海外DEX経由でも申告義務あり
「海外のDEX(分散型取引所)で換金したからバレない」と思っている人がいるなら、それは非常に危険な考えだ。
- CRS(共通報告基準):海外の金融口座情報が税務当局間で自動交換される仕組みが稼働中
- ブロックチェーン解析:Chainalysis等の分析ツールで取引履歴の追跡が強化されている
- 国税庁の姿勢:暗号資産の税務調査は年々厳格化しており、無申告への追徴課税(加算税・延滞税)も実例が出ている
ブロックチェーン上の取引は原理的に全て記録が残る。「申告しなければバレない」時代はすでに終わっていると考えるべきだ。
2026年にやるべきこと
ここまでの内容を踏まえて、Web3ゲームプレイヤーが今やるべきことを整理しておく。
1. 自分の利益額を正確に把握する
まずは年間でどのくらい稼いでいるか(稼ぎそうか)を計算する。現実的には、PROJECT XENOで月300〜5,000円程度、その他のタイトルでも月1,000〜3万円が中央値だ。年間にして数万〜36万円程度なら、会社員の副業20万円ルールや基礎控除48万円の範囲内に収まる可能性が高い。
2. 取引履歴を記録する習慣をつける
トークンやNFTの取得日・取得時価格・売却日・売却価格をスプレッドシート等で管理する。Cryptact等の損益計算ツールを使うのも手だ。確定申告の直前に1年分を遡るのは地獄なので、毎月記録するのが鉄則。
3. 2028年の分離課税に期待しすぎない
分離課税の対象は「特定暗号資産」に限定される見通しだ。自分が稼いでいるトークンが国内取引所に上場しているかどうかを確認し、対象外なら引き続き雑所得として申告する前提で準備する。
4. 利益が大きくなったら税理士に相談する
年間利益が50万円を超えたあたりから、所得区分の判断や経費計上の最適化が重要になってくる。ゲーミングPCやインターネット回線費用が経費として認められるかどうかは個別判断になるため、専門家の力を借りるべきだ。
まとめ:ライトプレイヤーは焦らなくていい
Web3ゲームの税金問題は、稼ぎが大きい人ほど深刻で、ライトプレイヤーほど実は軽い。分離課税の対象外と聞くとネガティブに感じるが、年間利益が小さいうちは累進課税の低税率ゾーンに収まるため、むしろ有利に働く。
大事なのは「知らなかった」で損をしないこと。取得時課税のルールを理解し、取引履歴を記録し、必要なら申告する。それだけで、Web3ゲームを安心して楽しめるはずだ。
参考ソース
- 国税庁 — NFTやデジタルアートに関する税務上の取扱い
- 国税庁 — 暗号資産に関する税務上の取扱い
- CoinPost — 暗号資産の申告分離課税に関する報道
- Cryptact — ブロックチェーンゲームの税金ガイド
- あたらしい経済 — 暗号資産税制改正の解説
免責事項:この記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の税務については税理士にご相談ください。



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