Claude Opus 4.7リリース ― Extended Thinkingを捨て、自律推論へ。Anthropic旗艦モデルの「段階的飛躍」

AI
結論:Claude Opus 4.7は「エージェントとして本番で使える最初のOpus」だ。Extended Thinkingを廃止しAdaptive Thinkingに移行、最大出力を128kに倍増、知識カットオフは2026年1月。価格はOpus 4.6と変わらない。そして裏では「公開できないモデル」が動き始めた。

2026年4月16日、AnthropicがClaude Opus 4.7をリリースした。「またモデルが更新されたか」と流してはいけない。今回はアーキテクチャレベルで方向転換が起きている。

最大のポイントは「Extended Thinkingを旗艦モデルから廃止した」こと。Anthropicが最も賢いとするモデルで、ユーザーが明示的に推論モードをオンにする設計をやめた。代わりに、モデルが自分でタスクの複雑さに応じて思考量を自律調整する「Adaptive Thinking」に切り替えた。

その意味を含めて、今回の変更を全部まとめる。

まずスペックを整理する

項目 Opus 4.7 Sonnet 4.6 Haiku 4.5
API IDclaude-opus-4-7claude-sonnet-4-6claude-haiku-4-5-20251001
コンテキスト1Mトークン1Mトークン200kトークン
最大出力128k64k64k
Extended Thinking❌ なし✅ あり✅ あり
Adaptive Thinking✅ あり✅ あり❌ なし
知識カットオフ2026年1月2025年8月2025年2月
価格(入力/出力)$5 / $25 /MTok$3 / $15 /MTok$1 / $5 /MTok

価格はOpus 4.6と完全に同じ。同じコストで大幅に賢くなったと見ていい。ただし後述するトークナイザー変更で、同じ文章が最大1.35倍のトークンを消費する可能性がある点は注意が必要だ。

最大の変化:Extended ThinkingをやめてAdaptive Thinkingに移行した

これが今回で一番重要だと思う。

Extended Thinkingとは、モデルが「考えているプロセス」を出力しながら回答する機能だ。複雑な問題を解くとき、ユーザーが明示的にこのモードをオンにして、モデルに長い思考チェーンを走らせる。Sonnet 4.6やHaiku 4.5はこれを搭載している。

なのにAnthropicは最上位モデルのOpus 4.7ではこれを廃止した。

代わりに採用されたのが「Adaptive Thinking」だ。モデルが自分でタスクの難易度を判断し、必要な推論量を自動的に割り当てる。簡単な質問なら即答、複雑な問題なら深く考える——この判断をモデルが自律的に行う。

人間の専門家を想像するとわかりやすい。熟練したエンジニアは全ての問題で「ステップを踏んで声に出して考える」わけではない。問題の難易度に応じて認知資源を自動的に配分する。Opus 4.7はそのアプローチを取った。

これはAIの「推論設計」に対するAnthropicの立場表明だと解釈している。「モデルが自分で考え方を決める時代」への移行宣言だ。

コーディング能力の「段階的飛躍」

公式ドキュメントはOpus 4.7を「Opus 4.6と比べてagenticコーディングで段階的な飛躍(step-change)を達成した」と説明している。「改善」ではなく「段階的飛躍」という言葉を公式がわざわざ使うのは珍しい。

具体的に何が変わったか:

  • 複雑な長時間タスクの処理:複数ステップにまたがる作業を監視なしで完遂できる精度が向上
  • 指示への正確な従順性:前のモデルが指示を「ゆるく」解釈していた部分を、より文字通りに処理するようになった(既存プロンプトの再調整が必要な場合あり)
  • 自己検証:生成したコードやロジックを自分でレビューする能力が向上

Claude Code向けに追加されたultrareviewコマンドも見逃せない。これはバグ検出に特化した専用レビュー機能で、通常のレビューより深い解析を行う。コーディングエージェントとしての実用性を本格的に高めるアップデートだ。

最大出力128kトークンが意味すること

Sonnet 4.6の最大出力が64kなのに対し、Opus 4.7は128k。倍だ。さらにバッチAPIではoutput-300k-2026-03-24ベータヘッダーを使えば300kまで出力できる。

128kトークンは日本語で約9万〜10万文字に相当する。これはコード生成で言えば「1リクエストで中規模アプリのコアロジック全体」が入る規模だ。

エージェントが長時間タスクを実行するとき、出力トークンの上限はボトルネックになりやすい。128kという上限は、エージェント用途で「途中で止まる」頻度を大幅に下げる。

知識カットオフ2026年1月——これは実用上かなり大きい

現在(2026年4月)から3ヶ月前までの情報を持っている。

モデル 知識カットオフ 「今」との差
Haiku 4.52025年2月約14ヶ月前
Sonnet 4.62025年8月約8ヶ月前
Opus 4.72026年1月約3ヶ月前

AI分野は半年で状況が別物になる。Haiku 4.5が持っていない情報——Sonnet 4.6がリリースされたことすら——をOpus 4.7は知っている。最新のフレームワーク、ライブラリのバージョン、直近の業界動向について質問したとき、知識の鮮度は答えの精度に直結する。

新機能:xhigh / ultrareview / タスク予算

Opus 4.7と同時に、いくつかの新機能が追加された。

xhigh努力レベル

これまで「high」と「max」の2段階だった推論努力レベルに、その中間として「xhigh」が追加された。レイテンシと推論深さのバランスをより細かく調整できる。コストを抑えつつ高精度が必要な場面で使いやすい設定だ。

ultrareviewコマンド(Claude Code)

Claude Codeでバグ検出に特化したレビューを実行できる専用コマンド。通常のコードレビューよりも深く、セキュリティ脆弱性や論理的バグを洗い出す用途を想定している。

タスク予算(公開ベータ)

APIを使う開発者向けに、トークン支出を上限設定できる機能が公開ベータに入った。エージェントが暴走してトークンを使い果たすリスクを管理できる。プロダクション運用で安心して使えるようになる。

新トークナイザーの落とし穴

Opus 4.7は新しいトークナイザーを採用した。同じ1Mトークンで処理できる文章量が変わっている。

  • Opus 4.7:1Mトークン ≒ 約55万語 / 約250万文字
  • 旧モデル:1Mトークン ≒ 約75万語 / 約340万文字

つまり同じ文章を入力したとき、Opus 4.7は旧モデルより最大1.35倍多くのトークンを消費する可能性がある。価格は据え置きだが、実質コストは用途によって上がりうる。特に長文を大量に処理する用途では事前にコスト試算をやり直した方がいい。

ただしAnthropicの内部評価では、全体的なトークン効率は向上しているという。コードや技術文書においては、以前より少ないトークンで同じ情報を表現できるケースもある。

Mythos:「公開できないモデル」が存在する時代の始まり

Opus 4.7と同じタイミングで、Anthropicは別の重大な発表もした。内部コード名「Capybara」、公式名「Claude Mythos Preview」だ。

このモデルはOpus 4.6から「段階的飛躍」と評され、コーディングとサイバーセキュリティに特化している。問題は——危険すぎて一般公開できないとAnthropicが判断していること。

実際にMythosはAWS、Apple、Cisco、CrowdStrike、Google、Microsoft、Nvidiaなど12社の大手パートナーのみに限定提供(Project Glasswing)されており、OSやブラウザに存在する重大な脆弱性を数千件発見済みという。$1億分の使用クレジットを提供し、OSSセキュリティ団体への$400万の直接寄付も行うなど、Anthropicが相当に本気で取り組んでいることがわかる。

Opus 4.7が「凄い」のは事実だが、Anthropicはその上に「公開できない凄さ」を持っている。これはAI開発の新局面だ。今後、公開されるモデルは「公開できるレベルに抑えたもの」という構図が標準になっていく可能性がある。

廃止モデルの注意:Haiku 3は4日後に終了

⚠️ 廃止スケジュール
  • Claude Haiku 3(claude-3-haiku-20240307):2026年4月19日廃止(あと数日)
  • Claude Sonnet 4 / Claude Opus 4:2026年6月15日廃止
Haiku 3を使っているサービスは至急Haiku 4.5への移行が必要。

ゲーム・個人開発者への影響

ゲーム開発者の視点でOpus 4.7を見ると、主に3つの変化がある。

1. 長時間のコーディング依頼が完結しやすくなった
128k出力 + agenticコーディングの強化で、「ゲームのセーブシステムを全部書いて」「戦闘ロジックをリファクタして」といった依頼が途中で止まらず完遂できる確率が上がった。

2. Claude Codeの実用性が上がった
ultrareviewやタスク予算など、開発フローを意識した機能が増えている。インディー開発者がClaude Codeをエージェントとして使う場面で、以前より信頼して任せられる場面が増える。

3. 知識が新しい
2026年初頭のUnityの状況、Godot 4.xの最新情報、直近のゲームエンジン動向を知っているモデルに変わった。「最新のUnity6の書き方で」という指示が今までより精度高く通るはずだ。

価格はOpus 4.6と同じ。試す価値はある。


参考ソース

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