前回の記事でGemma 4のスペックと可能性を紹介した。今回はその「可能性」を実際に動くアプリにした。
AIキャラ同士がオセロで対戦する。ただ打つだけじゃない。キャラが自分の性格に合ったセリフを、盤面の状況を見ながらリアルタイムで喋る。
何を作ったか
「ハンナ」と「ミスティ」——2人のAIキャラクターがオセロで対戦するアプリだ。
| ハンナ(黒) | ミスティ(白) | |
|---|---|---|
| 性格 | 元気で負けず嫌い。感情が顔に出る | 冷静で計算高い。余裕のある態度 |
| アイコン | オレンジ髪のピクセルアート | 紫髪のピクセルアート |
AIが担当するのは2つの仕事:
- 次の手を決める(オセロのプレイ)
- 盤面を見てキャラとしてセリフを生成する(感情表現)
実際の対戦を見てみる
序盤:探り合い
T4(4ターン目)。ミスティが先行して5-3でリード。ハンナのセリフ:
「うわっ! e3に置いた!? ちょっと待てよ!」
序盤から感情むき出し。ハンナの「負けず嫌い」キャラがAIによって一貫して維持されている。
中盤:ミスティの冷静な応手
ハンナが一時的に8-5でリード。だがミスティは動じない:
「ふーん、そこね。」
この一言で「余裕がある」キャラが完璧に表現されている。盤面でリードされていても、セリフには焦りがない。AIがキャラの性格と盤面状況の両方を読んでセリフを生成している証拠だ。
終盤:ミスティの逆転劇
終盤で一気にミスティが逆転。28-17で大差をつける。ミスティのセリフ:
「ふふ、随分と大胆ね。でも、私の計算通り、ここまでは十分よ」
盤面のリードを認識した上で、「計算通り」というキャラ設定に沿ったセリフ。AIが盤面の数値を読んでセリフのトーンを変えている。
結果:ミスティ WIN
最終結果:ハンナ 25 - ミスティ 39。ミスティの完勝。
「うわー! また負けた! 悔しいし、なんでこんなに負けたんだろう!」
最後までキャラが崩れない。「また負けた」という言い回しから、過去の対戦履歴すら感じさせる。60ターンの対戦を通して、2人のAIキャラクターは一度も「中の人」が見えなかった。
技術的に何が起きているのか
AIの2つの仕事
このアプリではGemma 4に2つの役割を与えている:
| 役割 | 入力 | 出力 |
|---|---|---|
| 対戦AI | 現在の盤面 + 合法手リスト | 次に打つ座標(例: e3) |
| セリフ生成 | 盤面 + キャラ設定 + 直前の手 | キャラクターのセリフ(日本語) |
セリフ生成のポイント
セリフが面白くなるのは、AIに盤面の「状況」を理解させているからだ:
- スコア差:リードしてるか負けてるかでトーンが変わる
- 直前の手:相手のミスや好手に反応する
- キャラ設定:同じ「負けてる」状況でも、ハンナは「悔しい!」、ミスティは「想定内」と反応が異なる
- ゲームの進行度:序盤・中盤・終盤でセリフの緊張感が変化する
これは台本ではない。60ターン全てのセリフがリアルタイム生成されている。だから毎回違う展開、違いセリフになる。再現性がないからこそ「生きている」感じがする。
ゲーム開発者にとっての意味
「NPCが喋る」の次元が変わる
従来のゲームのNPCは台本に縛られている。選択肢A→応答A、選択肢B→応答B。パターンが尽きればループする。プレイヤーはすぐ「これは同じことしか言わないNPCだ」と気づく。
Gemma 4でキャラにAIを入れれば、台本にない応答がリアルタイムで生成される。盤面の状況を見て、キャラの性格に合った、毎回違うセリフが出る。オセロだけの話じゃない。RPGの仲間キャラ、対戦ゲームの解説AI、ストーリーゲームの分岐——全部に応用できる。
AI同士の対戦 = 「見るゲーム」の可能性
このアプリはプレイヤーが操作しない。AI同士が勝手に対戦して、勝手にセリフを喋る。「見るだけで面白いゲーム」という新ジャンルの可能性がある。
将棋のAI対戦のように、性格の違うAIキャラ同士がバトルするのを観戦する。それぞれが性格に合ったセリフで実況する。キャラへの愛着が湧き、「推し」が生まれる。これは配信コンテンツとしても成立する。
筆者の本音:AIは「打つ」だけじゃなくて「喋る」のが面白い
筆者(uc)がこのアプリで一番面白かったのは、オセロの手筋ではなくてセリフだった。
ミスティの「ふーん、そこね。」の一言で、このAIが「キャラクター」として成立していると確信した。盤面で負けてるのに余裕を見せるセリフが出てくる。それが計算ではなく、キャラ設定をAIが理解して生成した結果だ。
ゲームにAIを入れるというと「強い敵AIを作る」「自動生成マップ」みたいな話になりがちだが、本当に面白いのは「キャラクターとして喋らせる」ことだと実感した。プレイヤーが覚えるのは敵の強さじゃなくて、敵の「セリフ」だ。
Gemma 4がスマホで動く2026年。ゲームキャラに「心」を入れる技術が、ようやく手の届くところに来た。
まとめ
- Gemma 4を使ってAIキャラ同士のオセロ対戦アプリを作った
- AIが次の手を打つ+キャラとしてセリフを生成する二重の役割を担う
- 60ターン全てのセリフがリアルタイム生成。台本なし、毎回違う
- 盤面の状況(スコア差・直前の手・進行度)を読んでセリフのトーンが変化
- 「NPCが喋る」の次元を変える技術。台本のないキャラクター対話が現実に
- AI同士の対戦 =「見るゲーム」という新ジャンルの可能性
参考ソース
- Gemma 4が昨日出た ― 本ブログ前回記事
- Gemma 4: Byte for byte, the most capable open models ― Google Blog
- Bring state-of-the-art agentic skills to the edge with Gemma 4 ― Google Developers Blog
- Gemma 4: The new standard for local agentic intelligence on Android ― Android Developers Blog
- Welcome Gemma 4: Frontier multimodal intelligence on device ― Hugging Face



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